相続登記をしないと、将来相続人同士でモメてしまうので早めの手続きが必要
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ名義の変更を行うことをいいます。
そして、相続登記は法律上の期限を決められているわけではありません。よって、相続登記をせずに放置していてもなんの罰もありません。
しかし、問題は別にあるのです。
相続が発生して不動産を取得した場合は、その名義変更(相続登記)をしておかないと相続人がどんどん増えて将来的にモメてしまう可能性があり、そうした事態を避けるために相続登記を行うのです。
例えば、父、長男、次男、そして長男の子は5人、次男の子は3人いたとします。
父が亡くなり、相続が発生したけれども相続登記をせずにそのままになっており、さらにそれから長男・次男が亡くなって相続が発生しました。
その場合、遺産分割協議は長男の子5人と次男の子の合計8人でしなければいけません。
8人全員で遺産分割協議書を作成し、8人分の実印押印、8人分の印鑑証明書も必要です。
ポイントは、「多数決ではなく、全員一致しないと手続きができない」ということです。
1人でも財産の分け方に反対の人がいると、裁判上の手続きとなってしまいます。
【※なお、遺言がある場合は、遺産分割は必要ありません。】
このように、相続が2回以上重なると誰が相続人となるのか、その調査だけで相当の時間が掛かり、相続登記の手続費用や手数料も高額となってしまいます。
また、相続した不動産を売却したい場合はもちろんですが、相続した不動産を担保に銀行から融資を受ける場合も、相続登記を済ませておかないと手続きはできません。
相続手続を専門家に頼むメリットよりも、頼まないデメリット
あらゆる手続というものは、時間をかけて頑張れば自分でできてしまうことがほとんどです。
相続の手続も同様です。
自分でやれば、出費を抑えることができますが、専門家に頼んだ方が良いメリットもあります。
例えば…
① 自分でやるより早くて正確。
② 労力がかからない。
③ 第三者が手続きすることで冷静にことが進む
④ 専門家ならではの知識でカバーできることがある。
こんなところでしょうか。
①と②は、しっかり調べる時間と能力があればカバーできますが、③と④だけは自分たちだけではなんともなりません。
相続手続は「財産を分ける」という側面があります。「それが全て」と言っても過言ではありません。
そんな時、お互いがお互いを信じたくてもなかなか難しいのが実情です。
「兄弟や親、あるいは他人がズルをしているのではないか?」
「騙されているのではないか?」
こんな疑念が生じてハンコを押せないでいる結果、手続が遅々として進まないそんな間に感情的なもつれが生じてきた…。
こんなご家族を多く見てきました。自分たちだけでやろうとして、裏目に出てしまったパターンです。
実印と印鑑証明書がそろっても、実際の手続き窓口で遺産分割協議書に重大なミスが発覚して手続きができないことがあります。
訂正のため再び他の相続人全員に実印を押してもらおうとしたが押してくれず、手続きが進まなかったこともあります。
実印はそう何度も押してくれるようなものではありません。確実にミスなく作成する必要があるのです。
そういうことを回避するためにも専門家を使うメリットがあります。
知識を持った専門家が手続きすることで利害関係のない人の意見や見解、知識を聞くことができます。その結果財産を分け合う者同士が角をつきあわせることがなく手続がスムーズに進みます。
そして、これが一番大事なことですが「その後も良い関係を続けていくことができる」ことです。自分たちだけで泥沼を繰り広げるよりはキズが浅く済みます。
相続手続をきっかけに家族や親戚の関係がギスギスしてしまい、疎遠になった家族をたくさん見てきました。長い間培ってきた良好な家族の関係が壊れてしまう。これほど悲しいことはあるでしょうか?
そういった意味で、私は専門家に頼むメリットよりも、頼まないデメリットが大きいと感じております。